赤ちゃんが寝返り・ずり這いを始めてからの睡眠トラブル 具体的な対応とヒント
成長の証?寝返り・ずり這いが睡眠に影響する理由
赤ちゃんの成長は親にとって大きな喜びですが、体の使い方が発達することで、それまでとは異なる睡眠の悩みが出てくることがあります。特に寝返りやずり這いを始める頃には、「寝返りしてうつ伏せになり泣く」「動き回って布団から出てしまう」「寝る前や夜中に動き回って寝ない」といった睡眠トラブルが見られることがあります。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。一つには、新しい体の動きが面白くて、寝るべき時間や夜中に目が覚めた時に練習したくなるという理由が考えられます。また、寝返りはできても元の体勢に戻るのが難しく、うつ伏せになってしまって困って泣くこともあります。さらに、自分の意思で移動できるようになったことで、寝床の感触や広さが気になり、落ち着かなくなる赤ちゃんもいるようです。
これらの成長に伴う変化は自然なことですが、親としては赤ちゃんの睡眠不足や安全が心配になります。特に上の子がいる場合は、下の子の夜泣きで上の子を起こしてしまうなどの悩みも加わることがあります。
この記事では、赤ちゃんが寝返りやずり這いを始めてからの睡眠トラブルの原因を理解し、具体的な対応策やヒントをご紹介します。
寝返り・ずり這い期の具体的な睡眠トラブルと対策
この時期に見られやすい具体的な睡眠トラブルと、それに対する対応策をいくつかご紹介します。
トラブル1:寝返りしてうつ伏せになり、体勢を戻せず泣いてしまう
- 原因: 寝返りはできるが、まだ仰向けに戻るのが難しい。うつ伏せの体勢に慣れていない、あるいは息苦しさを感じて不安になる。
- 具体的な対応:
- 優しく仰向けに戻す: 赤ちゃんがうつ伏せになって泣いている場合は、優しく声をかけながら仰向けに戻してあげましょう。ただし、泣かずにうつ伏せで寝ている場合は、無理に体勢を変える必要はありません。多くの赤ちゃんは、成長と共にうつ伏せ寝に慣れたり、自分で体勢を変えられるようになったりします。
- 安全な寝床環境の確認: うつ伏せ寝そのものは、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを高める可能性が指摘されており、医学的には仰向け寝が推奨されています。しかし、寝返りができるようになると完全に防ぐのは難しくなります。安全なうつ伏せ寝のためにできることとして、硬めの敷布団を使用し、枕やぬいぐるみ、掛け布団など、顔を覆う可能性があるものを周囲に置かないようにすることが重要です。日本小児科学会では、寝返りができるようになっても仰向け寝で寝かせ始めることを推奨しています。寝返り後の体勢については、寝返りの発達段階や赤ちゃんの様子を見ながら判断することになります。
- 日中の練習: 日中の起きている時間に、寝返りや仰向けに戻る練習をサポートしてあげると良いでしょう。安全な場所で腹ばい遊びの時間を持ち、体幹を鍛えることも役立ちます。
トラブル2:動き回って布団から出てしまったり、寝る体勢が定まらない
- 原因: 体を動かすのが楽しく、寝床の中でも活発に動き回ってしまう。寝返りやずり這いで移動することで、寝床の端まで行ってしまったり、思わぬ場所で止まってしまったりする。
- 具体的な対応:
- スリーパーや寝袋の活用: 足元まで覆うタイプのスリーパーや寝袋を使用することで、布団を蹴飛ばして寝冷えするのを防ぎ、また寝返りやずり這いでの過度な移動を少し制限できる場合があります(ただし、動きを完全に止めるものではありません)。季節に合った素材を選び、赤ちゃんの体温調節を助けましょう。
- 安全な寝床環境: 寝床の周囲には、頭をぶつけるような硬いものや、挟まる可能性のある隙間がないことを確認してください。ベビーベッドを使用している場合は、柵の間に体が挟まらないか、マットレスと柵の間に隙間がないかなどを確認しましょう。床に布団を敷いている場合は、周囲に家具がない広いスペースを確保すると安全です。
- 寝る前のクールダウン: 寝る直前に激しい遊びをすると、興奮して体が動き回ってしまうことがあります。寝る時間の30分~1時間前からは、絵本の読み聞かせや穏やかな音楽を聴くなど、静かな遊びに切り替えて、リラックスできる時間を作るように心がけましょう。
トラブル3:寝る前や夜中に目が覚めると、遊び始めてしまう
- 原因: 体が自由に動かせるようになり、夜中でも活動したくなる。寝床が「寝る場所」としてだけでなく、「遊ぶ場所」と認識されてしまう。
- 具体的な対応:
- 夜中の対応は最小限に: 夜中に目が覚めても、すぐに電気をつけたり、過度にあやしたりせず、声かけも最小限に留めるようにします。静かにトントンしたり、必要なケア(授乳やおむつ替え)のみを淡々と行い、再び眠りにつくように促します。これにより、「夜は寝る時間だ」ということを赤ちゃんが学んでいきます。
- 日中の活動量を適切に: 日中に十分な運動や活動ができているか見直しましょう。寝返りやずり這い、ハイハイなどを自由にできる時間を確保することで、体力を使い、夜間の睡眠につながりやすくなります。
- 一貫したルーティン: 寝る前のルーティン(例:お風呂→着替え→授乳/ミルク→絵本→寝かしつけ)を毎日同じ時間に行うことで、赤ちゃんはもうすぐ寝る時間だと予測できるようになり、スムーズに眠りに入りやすくなります。このルーティンは、成長に合わせて見直していくことも大切です。
月齢別の考慮事項と二人目育児の視点
寝返りは生後5~7ヶ月頃、ずり這いは生後6~9ヶ月頃に始める赤ちゃんが多いとされていますが、個人差が大きいです。この時期は、離乳食の開始、人見知りや後追い、つかまり立ちの準備など、他の発達も著しい時期でもあります。これらの発達も睡眠に影響を与えることがありますので、赤ちゃんの全体的な様子を観察することが大切です。
二人目育児の場合、下の子の睡眠トラブル対応が、上の子の生活リズムや睡眠に影響を与えないか心配になることがあります。例えば、下の子が夜中に泣いたときに上の子を起こしてしまう、下の子の寝かしつけに時間がかかり上の子との時間が減る、などです。
- 上の子を起こさない工夫:
- 寝かしつけや夜中の対応は、可能な限り静かに行います。声かけは小さく、物音を立てないように意識します。
- 寝室を分けることができる場合は、部屋を分けることも検討できます。難しい場合は、上の子の寝る場所と下の子の寝る場所を離すなどの工夫も有効です。
- 夜泣き対応で上の子を起こしてしまった場合は、上の子にも「大丈夫だよ、すぐにまた眠れるよ」などと安心させる声かけをすることで、不安を和らげることができます。
- 完璧を目指しすぎない: 二人の子どもの生活リズムを完璧に合わせたり、どちらのニーズも100%満たそうとしたりするのは非常に難しいことです。この時期は特に一時的な変化が多いですから、「今はこういう時期なんだな」と受け止め、できる範囲で対応することが大切です。パートナーや家族、利用できるサポートなども頼りながら、親自身の休息も確保するように心がけましょう。
まとめ
赤ちゃんが寝返りやずり這いを始める頃の睡眠トラブルは、成長に伴う自然な過程の一つです。新しい体の動かし方を習得し、それが面白くて仕方がない時期と考えられます。
うつ伏せ寝による安全性の確認、スリーパーや寝袋の活用、寝る前の穏やかな時間の確保、夜中の対応の最小化など、具体的な対策を試してみることで、赤ちゃんがより安全に、そして快適に眠れるようにサポートできます。
特に二人目育児では、上の子の生活への影響も考慮しながらの対応となり、負担が大きいと感じることもあるかもしれません。完璧を目指しすぎず、ご家族や周囲の協力を得ながら、できる範囲で対応していくことが大切です。
どうしても睡眠トラブルが改善しない場合や、赤ちゃんの健康面で気になることがある場合は、自治体の保健師さんや医師、必要であれば専門家(例えば、赤ちゃんの睡眠コンサルタントなど)に相談することも選択肢の一つです。この時期の赤ちゃんとの生活が、少しでも穏やかなものになるよう願っています。